『生き物と音の事典』
生物音響学会が編集した『生き物と音の事典』が朝倉書店より刊行されました。会員の皆様におかれましては会員割引が適用されます。事典の概要や注文方法については下記をご覧ください。
チラシのPDFはこちら
朝倉書店の紹介ページはこちら
1)価格
会員割引価格:14,500円(税・送料込.定価15,000円×1.1=16,500円より2,000円引き)
※2020年4月末日まで
執筆者の方は,より割安の執筆者割引(定価15000円×0.85×税=14,025円(税込))もあります.
2)連絡先と注文方法
朝倉書店編集部(FAX: 03-3268-1376 もしくはメール: masataka@asakura.co.jp)
まで
名前、住所、支払い方法(郵便振替、銀行振込)をおしらせください。
3)事典の序文より抜粋
水中から陸上にいたるあらゆる環境の中で,様々な生物が音を利用している.音が生物にとって重要な伝達手段になる例として,ヒトの会話から,鳥やカエル,魚,昆虫の音によるコミュニケーション,そしてコウモリやイルカのエコーロケーション(反響定位)などがあげられる.生物と音のかかわりに関する研究は,生物学及び工学の範疇である音響学として異なる学問分野で成熟してきたが,生物学と音響学の融合領域として生物音響学(Bioacoustics)が新たに発展してきた.生物音響学は,音による生物の行動と感覚を対象とした基礎研究から生物の機能に学ぶバイオミメティクスなどの応用研究までを含む(詳細は項目1-1,9-24を参照されたい).これらの成果は,音と生物の科学・技術を通じた社会貢献につながる.生物音響学に関する欧米の学協会が20世紀半ばから活動を進めているのに対して,我が国では一般社団法人生物音響学会が2014年に設立され,生物音響学の研究推進そして啓蒙活動を展開している.
『生き物と音の事典』は,生物音響学を網羅的に解説した初の百科事典である.本書は,生物音響学の発展と普及のために,生物音響学会内の編集委員会において企画,編集を鋭意おこなってきた.そして,総勢134名の第一線で活躍されている研究者から,本書の趣旨に沿って執筆いただいた.本書は,生物音響学の基礎的な項目からなる1章からはじまり,生物音響学が網羅する研究対象ごとに7章(霊長類,コウモリ,海洋動物,鳥類,両生爬虫類,魚類,昆虫類)に分けて,異なる生物種の比較アプローチを最終章とした.読みやすくかつ充実した生物音響学の知識が手に入りやすいよう,1~4頁で完結する225項目を,興味のある項目から読める形式とした.またウェブ付録として音のファイルへのアクセスを可能とした.
4)目次(項目と著者)
第1章 生物音響一般
1-1 生物音響学とは 高梨琢磨・松尾行雄・関 義正
1-2 音の発生と伝播 舘野 高
1-3 音の速さと波長 蒔苗久則
1-4 超音波の性質 小泉憲裕
1-5 純音と複合音 舘野 高
1-6 ノイズ 松井利仁
1-7 音の形 西川 淳
1-8 周波数分析と波形合成 小池卓二
1-9 音の減衰と吸音 西村方孝
1-10 音の反射と音のインピーダンス 蒔苗久則
1-11 音の干渉 西村方孝
1-12 共振・共鳴 小池卓二
1-13 音の回折と屈折 西村方孝
1-14 ドップラー効果 坂本修一
1-15 音の方向知覚 堀川順生
1-16 インパルス応答とその応用 坂本修一
1-17 マスキング・カクテルパーティ効果 小野宗範
1-18 協和音と不協和音 小野宗範
1-19 フィルター 上田和夫
第2章 哺乳類1 霊長類ほか
2-1 ヒトの発声 軍司敦子
2-2 ヒトの聴覚 岡本秀彦
2-3 ヒトの周波数感度と可聴帯域 和田 仁
2-4 音楽・ピッチ感覚 古川茂人
2-5 絶対音感 津崎 実
2-6 ヒト言語の進化 香田啓貴
2-7 日本語と英語の音響学的特徴 荒井隆行
2-8 言語の理解に必要な音声情報 上田和夫
2-9 視聴覚情報統合 寺本 渉
2-10 音声による話者認識 西村方孝
2-11 外耳の形と働き(ヒト) 大谷 真
2-12 中耳の形と働き(ヒト) 小池卓二
2-13 内耳の形と働き(ヒト) 澤村晴志朗・日比野 浩
2-14 内有毛細胞 工藤 基
2-15 外有毛細胞 任 書晃
2-16 骨導 鷹合秀輝
2-17 耳音響放射 原田竜彦
2-18 耳小骨筋反射と内耳の保護 小池卓二
2-19 聴覚求心路と遠心路 伊藤哲史
2-20 聴神経における音声の符号化 宋 文杰
2-21 音の3要素関連情報の符号化 地本宗平
2-22 一次聴覚野細胞の持続性応答 地本宗平
2-23 音源定位の仕組み 古川茂人
2-24 大脳における音の分析 宋 文杰
2-25 言語野 宋 文杰
2-26 聴力検査 鷹合秀輝
2-27 胎児の聴力 松岡理奈
2-28 臨界帯域 上田和夫
2-29 難聴 鷹合秀輝
2-30 耳鳴とは:人と動物からの知見 松島純一
2-31 人工中耳 小池卓二
2-32 人工内耳 三輪 徹・蓑田涼生
2-33 精神疾患と聴覚 竹本 誠
2-34 主観音 岡本秀彦
2-35 聴覚神経回路の可塑性 塚野浩明
2-36 動物の可聴帯域 塚野浩明
2-37 動物の歌,ヒトの歌 白松(磯口)知世・高橋宏知
2-38 ネズミの声,ゾウの声 入江尚子
2-39 サルの音声コミュニケーション 香田啓貴
2-40 デグーの音声コミュニケーション 上北朋子・時本楠緒子
2-41 モグラの聴覚 工藤 基
第3章 哺乳類2 コウモリ
3-1 コウモリの発声 松村澄子
3-2 コウモリのエコーロケーション 力丸 裕
3-3 コウモリの可聴帯域と周波数感度 堀川順生
3-4 外耳の形と働き 松尾行雄
3-5 中耳の形と働き 枝松秀雄
3-6 内耳の形と働き 枝松秀雄
3-7 コウモリの脳幹の構造と働き 鎌田 勉
3-8 コウモリの大脳における音の分析 堀川順生
3-9 コウモリのコミュニケーション音 松村澄子
3-10 コウモリの運動と音声 鎌田 勉
3-11 CFコウモリとFMコウモリ 堀川順生
3-12 ドップラー・シフト補償とエコー振幅補償 力丸 裕
3-13 テレマイクによる音響計測 力丸 裕
3-14 マイクロフォンアレイを用いた屋外でのコウモリの行動計測 藤岡慧明
3-15 マイクロフォンアレイを用いた屋内でのコウモリの行動計測 松尾行雄
3-16 超音波を用いたコウモリの種同定 福井 大
第4章 哺乳類3 海洋生物
4-1 イルカの発声 松石 隆・黒田実加
4-2 イルカの聴覚 松石 隆・黒田実加
4-3 イルカのエコーロケーション 赤松友成
4-4 イルカのコミュニケーション 森阪匡通
4-5 エコーロケーション音の種間差異 亀山紗穂
4-6 イルカの奥行き知覚 松尾行雄
4-7 イルカにおける視覚と聴覚の密な関係 村山 司
4-8 イルカの行動と生態 中原史生
4-9 イルカのホイッスル 森阪匡通
4-10 イルカの音進化 森阪匡通
4-11 クジラの生態 大泉 宏・青木かがり
4-12 ヒゲクジラのソング 山田裕子
4-13 ジュゴンの鳴音 市川光太郎・菊池夢美
4-14 マナティーの鳴音 菊池夢美・市川光太郎
4-15 鰭脚類の鳴音 水口大輔
4-16 受動的音響探査とは 木村里子
4-17 音響バイオロギング 赤松友成
第5章 鳥類
5-1 鳴禽類の発声と発声学習 高橋美樹
5-2 発声学習しない鳥類の発声 戸張靖子
5-3 鳥類の聴覚神経系 加藤陽子
5-4 フクロウの音源定位 芦田 剛
5-5 鳥類の聴覚域(オージオグラム) 加藤陽子
5-6 歌学習と分子生物学 森 千紘
5-7 歌発達とその社会的側面 森 千紘・太田菜央
5-8 耳の形と働き 森 千紘
5-9 歌の認知と生成の神経機構 田中雅史
5-10 聴覚刺激の識別と選好性 加藤陽子
5-11 性淘汰と歌 相馬雅代
5-12 歌の地域差・方言・種分化 濱尾章二
5-13 都市騒音と歌 香川紘子
5-14 鳥類の非発声による発音 太田菜央・相馬雅代
5-15 年齢による歌の変化 太田菜央
5-16 音声による個体認知 近藤紀子
5-17 警戒声による情報伝達 鈴木俊貴
5-18 親子間コミュニケーション 相馬雅代
5-19 メスの歌と雌雄間コミュニケーション 太田菜央・相馬雅代
5-20 托卵鳥における音声コミュニケーション 田中啓太
5-21 歌学習の多様性 藤原宏子
5-22 鳴禽類と音楽 一方井祐子
5-23 オウム・インコの発声機構 佐藤亮平
5-24 鳥類発声の刺激性制御 関 義正
5-25 ヨウムのアレックス 山﨑由美子
5-26 生物の音の分析に使われるソフトウェア 笹原和俊
5-27 オウム・インコのコール学習 藤原宏子・佐藤亮平
5-28 鳴禽類の発声学習によるコールの獲得 相馬雅代
5-29 さえずりと人間の文化 濱尾章二
第6章 両生爬虫類
6-1 両生爬虫類の聴覚 城野哲平
6-2 カエルの発声と運動神経 山口文子
6-3 カエルの音響コミュニケーションと進化 松井正文
6-4 コーラス 合原一究
6-5 カエルの超音波コミュニケーション 中野 亮
6-6 カエルのメスの発声 伊藤 真
6-7 ヤモリの音響コミュニケーション 城野哲平
6-8 恐竜の音声 西村 剛
第7章 魚類ほか
7-1 魚の聴覚 小田洋一
7-2 内耳の形 谷本昌志
7-3 魚の耳石 小田洋一
7-4 求心路と遠心路 杉原 泉・山本直之
7-5 内耳の形成過程 谷本昌志
7-6 有毛細胞の構造と働く仕組み 谷本昌志
7-7 魚の可聴帯域と周波数感度 杉原 泉
7-8 聴覚性逃避運動 小田洋一
7-9 魚の音源定位 小田洋一
7-10 魚の発音 宗宮弘明
7-11 鰾を用いた発音と音響特性 髙橋竜三
7-12 摩擦を用いた発音と音響特性 安間洋樹
7-13 イセエビの発音器官と音響特性 安間洋樹
7-14 魚の鳴音モニタリング 髙橋竜三
7-15 魚の鳴音コミュニケーション 宗宮弘明
7-16 側線器官の働きと形づくりの仕組み 和田浩則
7-17 側線感覚による行動 吉澤匡人
第8章 昆虫類ほか
8-1 昆虫の発音 高梨琢磨
8-2 昆虫の音と振動の受容器 高梨琢磨
8-3 鳴く虫と文化 宮武賴夫
8-4 音響測定法と行動実験法 高梨琢磨
8-5 中枢の働き 染谷真琴・小川宏人・上川内あづさ
8-6 中枢による発音の制御 岡田龍一
8-7 音源定位 中野 亮
8-8 音と振動に対する行動と神経による制御 西野浩史
8-9 機械感覚子 土原和子
8-10 機械受容体の仕組み 土原和子
8-11 振動コミュニケーション 上宮健吉
8-12 超音波コミュニケーション 中野 亮
8-13 ショウジョウバエの音コミュニケーション 石川由希・上川内あづさ
8-14 テナガショウジョウバエの交尾と音 松尾隆嗣
8-15 ミツバチの音コミュニケーション 藍 浩之
8-16 カメムシの振動コミュニケーション 上地奈美
8-17 ベニツチカメムシの給餌振動 野間口眞太郎
8-18 クロスジツマグロヨコバイの振動コミュニケーション 福井昌夫
8-19 アリとチョウの共生 坂本洋典
8-20 カブトムシのだましの振動 小島 渉
8-21 線虫の振動受容 田中龍聖
8-22 甲虫の摩擦音 大谷英児
8-23 イモゾウムシの発音の変異 立田晴記
8-24 コオロギの音コミュニケーションと種分化 ⻆(本田)恵理
8-25 セミの発音 税所康正
8-26 音や振動がかかわる孵化 向井裕美
8-27 感覚情報の統合利用 深谷 緑
8-28 音と振動によるコミュニケーションと多種感覚情報 向井裕美
8-29 振動による害虫防除 高梨琢磨
8-30 超音波による害虫防除 小池 明
8-31 シロアリの振動と音による防除 大村和香子
8-32 カの音響トラップ 小川賢一
8-33 植物と動物の音や振動による相互作用 山尾 僚
8-34 植物の機械感覚 飯田秀利
8-35 植物のアコースティック・エミッション 蔭山健介
第9章 比較アプローチ
9-1 発声器官の比較 原田竜彦
9-2 聴覚域(オージオグラム)の比較 堀川順生
9-3 外耳の形状と位置の多様性 大谷 真
9-4 音声帯域の違いによる中耳の構造的な違い. 原田竜彦
9-5 蝸牛の構造:渦巻き型か否か 任 書晃・日比野 浩
9-6 鼓膜と中耳の多様性(脊椎動物) 任 書晃
9-7 音をとらえる機械受容チャネル 谷本昌志
9-8 聴覚器官の発生と進化 武智正樹
9-9 大脳皮質の多様性:聴覚野の違い 小島久幸
9-10 比較の視点からの音源定位 芦田 剛
9-11 健常者と盲人の音情報処理の違い 力丸 裕・関 喜一
9-12 盲人のエコーロケーション 力丸 裕・関 喜一
9-13 コウモリとイルカのエコーロケーション 力丸 裕・赤松友成・松尾行雄
9-14 昆虫とコウモリの相互作用 中野 亮
9-15 昆虫と動物の聴覚器の収斂進化 西野浩史
9-16 ヒトの感性と昆虫の発音 穂積 訓
9-17 動物の絶対音感 饗庭絵里子
9-18 鳴禽の歌とヒト言語 水原誠子
9-19 鳥の発声学習と音楽・リズム 関 義正
9-20 発声学習の収斂進化のあり得るシナリオ 関 義正
9-21 電気魚の発電 小橋常彦
9-22 魚の電気感覚 小橋常彦
9-23 電気コミュニケーション 小橋常彦・川崎雅司
9-24 バイオミメティクス 高梨琢磨・松尾行雄